縄文杉ルート

- Jomon-sugi Route, Yakushima

屋久島の深い森の奥で、悠久の時を静かに重ねてきた杉の巨木、縄文杉。その杉を訪ねる、総行程22km、所要時間也約10時間のトレッキングルートだ。前半戦のこのルートの名物・トロッコ道では、屋久杉伐採の歴史と、森が再生してゆく姿を見ることができる。深い森に入ってゆくと、大王杉、夫婦杉、そして縄文杉といった樹齢数千年の巨木の森が出現する。

縄文杉ルート

度々現れる橋。欄干のない橋はスリル満点!
ガイドの田平さんは落ちても大丈夫なんて言うけれど……。

屋久島と聞いて、誰もが思い浮かべるのが縄文杉。その誕生は2000年前、いや7000年前だと諸説あるけれど、数千年前に生まれた杉ということは確か。そんな太古の昔に生まれた杉に会いに行くのがこのルートだ。
けれどそう簡単には縄文杉はその姿を現わさない。登山口から縄文杉へは、往復で22kmを歩く。東京駅から吉祥寺くらいの距離だ。約9〜10時間かかる。標高差は700m。東京タワーの約2倍強。まだ暗いうちに登山口を出発し、夕やみに包まれる頃に戻る。日常では歩くことのない距離を歩き、悠久の時を生きる縄文杉に出会った時の感動はまたひとしおだ。
縄文杉ルートは、ついつい縄文杉を見るためだけの登山になりがちだが、つい40年前まで伐採されていた新しい森、ところどころに母樹として残る巨木、そしてその幹に着生する様々な植物を楽しみながら歩きたい。側を流れる河の音を聴き、杉とともに同じ森に生きる様々な植物の匂いを嗅いでみるのもいい。林芙美子が小説「浮雲」の中で月に35日雨が降ると記しているように、屋久島はとても雨が多い島だ。雨の屋久島の森は格別に美しい。白く煙る細かな雨粒が緑に染まり、森がミルキーグリーンに包まれる。視点をマクロに切り替えると、コケのベッドで育つ1歳の屋久杉の葉先に、雨粒が寄り道をしているのが見える。レースのようなクモの巣を、キラキラと飾る雨粒も美しい。お洒落な雨具を準備万端整えて、雨の登山を楽しもう。

人生初の山登り。キツかったー。22kmもあるなんて知らなかったから(誰も教えてくれなかったっ……)、ガンバれたのかも。最後のキツい山道を登って縄文杉に会えた時の感動といったら(涙)。縄文杉から"ヤクシマオニクワガタ"が舞い降りてきた時には、神の使いかと思ったよ!そしてまたパカッと羽を広げて、縄文杉のほうに飛び去っていった……(じ〜ん)。でも実は光が当たっている有名スポットより、ただ黙々と歩いているだけのトロッコ道の脇の、水をたっぷり含んだコケや、見向きもされないシダが美しかったりする。全行程全長22kmの、そんな光の当たっていないモノたちも楽しんで欲しい「縄文杉ルート」です♡

A 安房川 B 小杉谷橋 C 小杉谷集落跡 D ウィルソン株 E 巨木の森 F 縄文杉

安房川

朝5時出発。夜も明けないうちに歩き始め、約1時間が経過。枕木が不規則に並ぶトロッコ道を黙々と歩く。そしてここが最初の休憩ポイント。見上げると、鉄橋を渡る登山客が見える。ここで休憩しているのは私たちだけ。ガイドの田平さんの勧めもあって、トレッキングシューズを脱いで河に足をポチャン。気持ちいい〜。ストレッチしたり、岩を飛び渡って遊んだり。そんなことをしている間に、田平さんが暖かいコーヒーを淹れてくれる。優しい♡ 元気も回復。さぁ歩くぞ〜。

トレッキングシューズを脱いで冷たい河の水につけると、不思議と元気が回復。

鉄橋を歩く登山客が見える。

小杉谷橋

さっき私たちが休憩していた安房川にかかる鉄橋。縄文杉ルートには、こうした大小たくさんの橋がかかっている。この橋は大きくて欄干もあって立派だけど、板が2枚渡してあるだけの心細い橋もある。けれど、そんな橋から見る眺めは最高! 枕木の並ぶトロッコ道に飽きてきた頃に現れる橋は、パッと目が覚める、縄文杉ルートのスパイス。と、突然、トロッコがやってきた。ちっちゃくてかわいい。スピードも超ゆっくり。このグリーンのは新型車両!?だそう。

小杉谷集落跡

1923年から1970年までの47年間、屋久島国有林の開発拠点として賑わっていた場所。1960年の最盛期には133世帯がここを中心に生活していたそう。つまり、このあたりの杉は40歳以下の杉がほとんど。屋久杉の先輩たち……2000年〜3000年という単位の杉に育つにはまだまだ時間がかかるけれど、かつての人の営みの跡をゆっくりと覆い、静かに原生林に戻りつつある気配に耳を澄ませてみたよ。

ウィルソン株

約3時間トロッコ道を歩き、大株歩道入り口からいよいよ山道へ。そこから約30分過ぎたあたりに現れるのがウィルソン株。推定樹齢3000年。切り口の高さは4m。直径約4.5m。豊臣秀吉の命で切られた株と言われている。この切り株の中には入ることができて、中は10畳ほどの広さ。湧き水が流れていて、祠もあって、とても神聖な雰囲気。そんな雰囲気にも負けず、切り株の中から上に向けて写真を撮るとハートに見えるポイントがあると聞いたので、一生懸命探したよ。ちょっとしたカメラの傾きでなかなかハートに見えない。悪戦苦闘してパチリ!ほんとにハートに見える♡ 最初にこのポイントを見つけた人、エラいかも。

巨木の森

ウィルソン株から約1時間半、山道を登っていくと現れるのは幻想的な原始の森。大王杉は推定樹齢3000年。縄文杉が発見されるまでは最大の杉とされていた。そして、手と手をつなぐかのようにつながって見える夫婦杉。この手がどちらの杉のものか、様々な説があると田平さん。それぞれの推定樹齢1500年、&2000年。500歳違いの歳の差夫婦(笑)。ギリシャ神話に登場する蛇の髪を持つメデューサのように見えるのが通称メデューサ杉。先端部分が台風などで飛ばされ、こんなカタチになったと言われています。

左上:通称メデューサ杉。蛇頭ちゃん。 左下:夫婦杉。手をつないでます。 右:大王杉。幹の裂け目も神々しい。

縄文杉

やっと会えたね縄文杉!遠かったよ〜。推定樹齢は2000年から7000年と言われている。ずいぶん開きがあるね。生年月日未公開の謎に満ちた屋久島の主人公デス。中が空洞になっているので、算定できないのだとか。この杉が発見されたのは、1966年。今も現役で活躍する最長老の樵のお話によると、もっとスゴい杉が屋久島にはある……ゴニョゴニョ、だそう。深い深い森の奥で静かに時を刻む杉に思いを馳せていたら、田平さんが、デッキの上に寝っころがってみて、と。うわ〜、寝っころがって見上げる縄文杉が新鮮!空高く伸ばした葉先が輝いている。あれ? ちっちゃいクワガタが飛んできたよ。アゴのギザギザが超カッコいい! ヤクシマオニクワガタという種類なんだって。しばらく手に乗せて観察していたら、またフワーっと縄文杉方面に飛んでいった。バイバイ、クワガタちゃん、そしてバイバイ縄文時代生まれの杉のおじいちゃん!

写真:縄文杉の根元を守るため、平成8年にデッキが作られたそう。お昼時はデッキの上も混雑するけど、人がいなくなればこんなふうにデッキの上に寝っころがって縄文杉を楽しむこともできる。

動物たち

屋久杉も、赤い木肌が魅惑のヒメシャラも、コケも、シダも魅力的だけど、縄文杉ルートにはさらなるエンターテナーが存在する。そう、動物たち。ヤクジカは小型のシカ。縄文杉ルートを歩く間、立派なツノのオスも、まだ幼いバンビも何頭も見かけたよ。近年数が増えていて、屋久島内に1万8000頭いると言われている(ちなみに人間の数は1万4000)。縄文杉にいた時に舞い降りてきたアゴがカッコいいヤクシマオニクワガタ、渡りをする蝶アサギマダラ、ルリセンチコガネ……、昆虫もたくさん。帰り道で私たちを見送ってくれたヒキガエルは、都会で見るヒキガエルより堂々としていたよ。きっと屋久島を誇りに思っているに違いない!

縄文杉ルート

鹿児島県熊毛郡屋久島町安房(荒川登山口)

縄文杉ルートの出発点が、荒川登山口。ここへは車両混雑と環境負荷軽減のため、一般乗用車、観光バスの乗り入れが規制されている。それらの車両は、手前の屋久杉自然館前の駐車場に停め、荒川登山バスに乗り換えて登山口へ向かう。荒川登山バスの運賃は往復1700円(前日までに事前購入しておこう)。販売取扱所の案内は、屋久島観光協会 → www1.ocn.ne.jp/~yakukan/


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