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建築家・中村拓志が巡る、九州建築の旅。ARCHITECTURE in Kyushu 第1回 福岡編 >

アクロス福岡 / エミリオ・アンバース、田瀬理夫

アクロス福岡 / エミリオ・アンバース、田瀬理夫

- ACROS FUKUOKA

都市に現われた緑に覆われた "山" は、
自然現象を引き起こしていた。

Photography:Hiroshi Mizusaki

福岡の建築の旅で、中村拓志が一番楽しみにしていたのがここ『アクロス福岡』だ。建物は見ることができたのだが、雨が降り出したために撮影は叶わず、後日建物の撮影のみ行った。
アクロス福岡の顔ともいえる屋上緑化スペースが「ステップガーデン」だ。 その緑化面積は5400㎡と日本の屋上緑化施設の中でも最大級規模を誇る。

中村拓志「都市の中に出現した "山" によって、昼間は吹き上げる風が、夜間は山おろしの風が吹くそうです。ひとつの建築によって、自然現象まで作り出しているのは素晴らしいことだと思います。
『アクロス福岡』は建築と緑の融合の先駆けとなった建物です。日本最大、世界でも有数の緑化建築です。バブル崩壊後の1995年にこれだけの規模の緑化ができたのはすごいことだと思います。竣工から15年が建っていますが、まったく風化することのないいい建物です」

建設当初の構成樹種は全体で76種類、3万7000本を植栽。その後補植したり野鳥等によって運ばれた樹種が増え、15年を経た現在では約120種類、5万本程度に増えている。
中村「『アクロス福岡』が素晴らしいのは、自然の力で樹種が増えている点です。最近、少品種大量生産の農業の危険性が取り沙汰されていますが、『アクロス福岡』の多品種の樹木は、大量の同一種の害虫の発生を抑えるために、農薬の使用を低減し、都市に均衡ある自然をもたらしています。
環境問題が叫ばれる近年では、屋上緑化がさかんに行われるようになりましたが、メンテナンスフリーで画一的な緑化パネルを貼るだけに留まるところもあります。でもそれが、環境を破壊しがちな建築行為に対する、単なる免罪符として利用されていないでしょうか。自然はキレイなだけではなく、不便も多いものです。屋上緑化をすれば枯葉も落ちるし、管理も大変になります。それなりの覚悟が必要になることを心に留めておかなければならないんです。そういう意味で、このデザインの最大の功労者は、このビルのオーナーです。そのおかげで、ここにはたくさんの種類の実や花が咲き、鳥や人が集まるのでしょう。
それから、今日初めて『アクロス福岡』を訪れて、建物内部の吹き抜けから外を見た時に、ステップガーデンの木々が中から透けて見えることがわかりました。これは単なる屋上緑化を超えて、新しいデザインです。このように、実際に建物に足を運べば、写真を見ただけではわからないマテリアルや建築家の論理に触れることができます。
僕の『con-quest』の建築の旅も、写真を見て情報を集めるだけではなく、実際に旅をしてもらうためにあってほしいと願っています」

上・屋上展望台からの眺めは最高! 天神中央公園と『アクロス福岡』が一体となるようランドスケープが構成されている。

中・段状ステップガーデンの5階から1階まで滝が流れている。

下・約120種類、5万本の樹木が、アクロス山を構成している。

建物解説

アクロス福岡

1995年開業。旧福岡県庁跡地に立つ複合施設。南の天神中央公園に面した段状の「ステップガーデン」は、”山”をコンセプトとした大規模な屋上緑化であり、公園と一体となったランドスケープを構成している。最上階の展望台に登りながら、四季の植物を巡るような植栽計画がなされている。1996年、BCS賞(建築業協会賞)を受賞。2010年、都市緑化基金主催の「生物多様性保全につながる企業の緑100選」に選出される。
この施設の基本設計は、エミリオ・アンバース。ニューヨーク近代美術館でデザイン部門のキュレイターを務め、1976年に設計事務所エミリオ・アンバース&アソシエイツを設立。建物を緑化する作風が特徴で、日本にも数点の作品がある。「ステップガーデン」の植栽設計は、造園家のプランタゴの田瀬理夫。

アクロス福岡

福岡市中央区天神1-1-1

tel 092・751-8591(エイエフビル管理)

ステップガーデンの屋上展望台は、土日祝日の10:00〜16:00のみ開園(雨天時は閉鎖)。

www.acros.or.jp


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