初代の教えを胸に新しい世界を拓く瑞穂窯

- Arao-city, Kumamoto

上:先代の福田豊水作の花器と茶碗。焼き込んだ土肌の中に浮き上がる青が美しい。 中左:ブリキでできた愛らしい蛙のオブジェ。蔵に貼り付けられたタイルはるいさんの作。 中右:灯油と薪の併用窯を備えた工房。 下:白小代の肌合いが美しいとっくり。

父を継いで窯主に

最後に、今回のナビゲーターである福田るいさんの「瑞穂窯」を訪ねた。女性で当主とは、稀少な存在だが、初代である父・福田豊水氏のあとを継いで、今に至る。実は、姉は菓子研究家の福田里香さん。長尾さんと公私にわたって親交があり、その縁でるいさんの器を知り、数年前に「瑞穂窯」を訪ねたのが、長尾さんと、小代焼の出会いだった。

「祖父が古小代を集めていて、その影響を受けた父は、古小代の微妙な青色を復元したいと、独学で窯をおこしたんです」と、るいさんは窯の成り立ちを教えてくれた。「父は、江戸中期から後期へかけての古小代で、しっかりと焼き込まれた黒っぽい土肌の中に出てくる青みが好きで、その青を追い求めていました。結局、私も、その青を追いかけています。

上:真骨頂の一つであるしのぎのシリーズ。幅の広いもの、狭いもの、斜めのものとバリエーション豊か。 中左:力を入れている、印花のシリーズ。手前が凹版、奥が凸版。それぞれに雰囲気が異なる魅力を見せてくれる。 中右・下:庭の中には特価のついた作品が並ぶ棚もあり、楽しい。

独自の魅力を追求する

八女の旧家から移築したという、歴史感じさせる門をくぐって階段を上がると窯場が見えてくる。家の一角を開放した展示場には、ぎっしりと作品が飾られている。ぐるりと見渡したあとに、一周、ニ周とゆっくり見ていくと、るいさんの嗜好が見えて楽しい。

一つの特徴が、しのぎや印花といった凹凸のある紋様だ。小代焼ならではの、凛とした力強さは残しつつも、いい意味での女性らしい趣が加わって魅力が増している。
「凝ると、ひとつのことをとことんやってみる性質なんですね。しのぎを始めて、もう20年。一般的なしのぎから始めて、深いもの、浅いもの、斜めのもの、交差するもの、など、あらゆる手法を試した結果が、今の私のしのぎです。

印花はこの2~3年ですが、凹版で刻印するもの、凸版で押すもの、その両方を組み合わせることも。オリジナルの型をおこすことも含めて、研究中です」とるいさん。また、落し還元による独自の焼成法で色のバリエーションを増やし、現代の器を作り出す。
「この印花のシリーズは、るいさんらしくていいですね。台皿がすごくいい」と長尾さん、さっそく料理を盛り付ける器に決めた。

「子供の頃は、父のあとを継ぐなん考えてもいませんでした。九州産業大学の油彩科で学んだのち、やはり3Dかなと。そして父の下で修業を始めましたが、やはり外の世界を見なければと思い、益子の島本達三さんの門を叩きました。「2週間使ってください。使えなければ諦めますから、と直談判。怖いもの知らずだったんですね」と笑う。
「出張で上京した日も島本先生は、夜、工房に戻って朝まで作陶に励む、そんな仕事ぶりでした。陶芸を志ざすということが、どんなことなのか、背中を見て学びました」。

そして、熊本に戻って25年。「伝統とは、灰を守ることではなく、熾(おき)を密かに保ち続けること」。つまり、窯の火を絶やさないと同時に、情熱の炎も燃やし続けるということなのだと、静かに、けれど力強く語ってくれた。

凹版(左)と凸版(右)でそれぞれ印花をあしらった台皿。

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しのぎの発展形ともいえる杉綾文の鉢と、深く艶やかな青小代の鉢。

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瑞穂窯

熊本県荒尾市上平山字庄山914

tel  0968-66-2380
fax 0968-66-2922


実家のビアガーデン博多屋を訪ねて

無事に撮影が終了したのち、るいさんの実家が、1945年から経営しているという、レトロなビアガーデンを訪ねた。テーブルのタイルや食器など、随所に「瑞穂蒲」の作品が使われ、趣味人だったお祖父さまの立てた彫像などが、独特の雰囲気を醸しだして、なんとも楽しい。普段はそんなに飲まない長尾さんも、おいしそうにビールを飲みほした。

上:おつかれさまでした~。乾杯!
下右:もろきゅう、ぴり辛こんにゃく、唐揚げなど人気の品がずらり。
下左:タイムスリップしたようなレトロな雰囲気のあるビアガーデン。
博多屋

福岡県大牟田市橋口町3-9

tel  0944-52-2319
5月2週の金曜から9月2週の日曜まで。
営業時間:17:00~21:30(L.O.)
シーズン中無休



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